国際環境刑法は実現するか?
2008/12/12(Fri)
 気候変動、海洋環境問題の作業をしていると、時々、

「地球温暖化防止失敗により被った損害の補償を先進国、全世界の政府に対して請求する。そのため、国際司法裁判所、国際刑事裁判所に申し立てをすることを検討中」

 といった内容の記事を見かけます。(関連リンク EPOCA

 島嶼国や沿岸国、特にツバル(Tuvalu)等の小さな島国や途上国は、海面上昇や地球温暖化による影響への対応が十分取れず、大きな損害を受けているのも事実です。

 産業革命以降、温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、二酸化窒素など)の増加と現在の地球温暖化が関係していることは、既にIPCCによってほぼ断言されているので、その因果関係も正しいと言えるでしょう。
(ただし、これ「だけ」が原因では無いと思いますが。)

 しかし、現状の国際法の枠組み上、上記のような訴訟が可能かというと、まあ「可能性は限りなくゼロ」というのが現実です。

 そもそも、国際刑事裁判所(International Criminal Court)は、「個人の国際犯罪」を裁くための裁判所であり、審理対象は「集団殺害犯罪(ジェノサイド)」、「人道に対する犯罪」、「戦争犯罪」などの国際人道法違反を裁くことを目的としており、環境問題を扱う裁判所ではありません。

 また、地球温暖化(温室効果ガスの排出)自体、「犯罪」ではない事に加えて、加害者・被害者、損害実態、損害額の特定、因果関係の立証が難しいという、環境訴訟上の特徴をどのように解決するかも問題です。

 国際環境法の履行など、環境問題に管轄権を有する可能性があるのは、どちらかというと、国際海洋裁判所(International Tribunal for the Law of the Sea)ではないでしょうか(UNCLOS 290条)。この点を論じる国際法の論文はいくつかあります。

 つい先日会合を終えた、気候変動枠組み条約の第14回締約国会議(UNFCCC COP14)では、温暖化被害対策を支援する資金源をめぐって紛糾したようですが、昨今の国際金融危機や主要国の政治変動など、タイミングの悪さもあってか、あまり具体的な進展はないようにも思えます。

 重要なのは、「国際環境刑法/国際環境裁判所」などを作り国々を「裁く」ことではなく、制度や技術などによって排出量を減らしていくことではないでしょうか。
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